Form26ASとは?

日本においては給与から源泉徴収された所得税額を確認するとき、会社から発行された「源泉徴収票」を確認するのが一般的ですが、インドでは会社から発行される「Form16」の数値が税務当局のポータルサイト上で反映され、最終的に税務当局からオンラインで発行される「Form 26AS」というフォームで源泉徴収された所得税額を確認します。

この書類は2010年にインド税務当局から公式に発表され、TDSやTCSといった源泉所得税にかかる年間の納付状況について、源泉徴収義務者ごとに日付順で記載されているため、それまでは取引先ごとに発行されるサイン済のForm 16/16AやForm 27Dにおいて確認しなければならなかった当該年度の納税額が、オンライン上で容易に一覧として把握することが可能となっています。

Form26ASは、インドの税務当局が公式に運営している”e-Filing”と呼ばれる納税者ポータルサイトで公式に発行されており、アカウントを登録すれば入手が可能となっています。このように非常に有用なForm26ASですが、2020年6月から様式が変更となり、開示情報の範囲が拡大されましたので、本稿ではその詳細について解説したいと思います。

Form26ASの新様式における変更点

税制改革と納税手続きに関する透明性の向上を政策目標に掲げるインド政府は、2020年度予算案において納税者憲章の制定に加え、税務申告の手続きの透明化・簡素化の一環としてForm26ASの改訂について発表しました。

(インド納税者憲章の制定に関する記事はこちら)

基本情報(PART A)

まず基本情報において開示情報が拡大されています。具体的には、これまで開示されていた納税者名、PAN番号、住所に加えて、Aadhaar(アーダール)番号、生年月日、携帯電話、メールアドレスが追加開示されることとなります。

その他詳細情報(PART B)

以前のForm26ASでは、源泉所得税の徴収のみと限定的でしたが、今回は新たに特定の金融取引(株式の売却、投資信託の償還、不動産の売却などの金融取引)や税金の納付・還付の状況、税務調査等の係争事案の進捗ステータスなどが盛り込まれています。特に還付金手続きに関する進捗状況や、税務調査の進捗状況に関する開示は納税手続きの透明性向上が見込まれるため、納税者からは大きな期待が寄せられています。

 (根拠法令:2020年財政法及び1961年所得税法第285BB条)

新様式への変更による影響

税務申告の簡素化とForm26ASの改訂については、金融取引にかかる情報開示が関係しています。こちらの開示項目は、特定の金融取引(SFT : Specific Financial Transaction)として以前から法律上規定されており、銀行並びに投資信託・債券を扱う金融機関等との取引についてForm61Aという別の様式で申告・開示するよう義務付けられています。(根拠法令:インド1961年所得税法第285BA条及びインド所得税法施行規則 第114-E条)

今回の法改正により、所得税や法人税といった直接税を扱う管轄組織であるCBDT(Central Board of Direct Tax: インド直接税中央委員会)は、上記を背景に2020年5月28日付で通達(No.30/2020)を公布しており、Form61Aによる申告内容がこれからはForm26ASにおいて開示されることとなる点について言及しています。つまり、特定の金融取引にかかる申告情報がForm26ASと紐づくこととなるため、税務当局と納税者間での性善説を前提とした情報共有がよりスムーズになることが見込まれます。(根拠法令:CBDT通達(No.30/2020)及び1962年インド所得税法施行規則 第114-I条)

なお、改訂されたForm26ASの新様式は、新たにAIS(Annual Information Statement)と名付けられていますが、こちらはForm 61A が従前よりAIR(Annual Information Return)と法律上名付けられていたことに由来するようです。

このように、インドでは税制改革が着実に進んできており、モディ首相のリーダーシップによって官僚主義や汚職が排除される制度設計になりつつあります。こうした改革は納税者とっては嬉しいことであり、それゆえインドの投資環境の改善にも繋がっているのだと考えられます。遅々として前へ進む巨象インドがどこまで行けるか、大きな期待を込めてしっかりと見守っていきたいと思います。

執筆者紹介:田中啓介 / Keisuke Tanaka

Global Japan AAP Consulting Private Limited

代表取締役社長/米国公認会計士

南インドのチェンナイにてGlobal Japan AAP Consulting Private Limitedを創業、スリランカのコロンボにGlobal Japan Lanka Consulting (Pvt) Ltdを設立し、インドおよびスリランカに進出する日系企業の市場調査や法人設立支援、会計税務、法務、労務、カンパニーセクレタリー等の各種コンプライアンスのアウトソーシング支援やアドバイスを中心として、これまで100社超の日系企業の南アジア進出を支援。2012年からチェンナイに移住。

【Global Japan Consultingインドおよびスリランカ法人の概要】

会社名
Global Japan AAP Consulting Private Limited(インド法人)
Global Japan Lank Consulting (Pvt) Ltd.(スリランカ法人)
代表Founder & Managing Director
代表取締役社長 田中 啓介(米国公認会計士)
事業概要南インドのチェンナイに本社を構える国際会計事務所。 バンガロールおよびハイデラバードにも拠点を持ち、インドに進出する日系企業の市場調査や法人設立支援、会計税務、法務、労務、カンパニーセクレタリー等の各種コンプライアンスのアウトソーシング支援やアドバイスを提供。
所在地インド/スリランカ(チェンナイ本社)
その他拠点バンガロール、ハイデラバード、コロンボ
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