前々回2015年の大統領選挙にともなう政権交代の後は、慢性的な財政赤字やIMF(国際通貨基金)からの支援受け入れを背景に、スリランカ政府は増税への舵取りを余儀なくされました。それとは対照的に前回2019年11月の大統領選挙後、新大統領は段階的にかつ短期間で大幅な減税を開始しました。今後も制度が更新されていく可能性は高いですが、まずは2020年8月5日に予定されている全国総選挙における与野党の得票結果と新内閣の発足を待つことになります。2020年7月末までに行われた、主な税制改正は以下のとおりです。

  • VAT(付加価値税)の税率引き下げと免税枠の拡大
  • NBT(国家建設税)の撤廃
  • 個人所得税の税率引き下げと給与所得控除額(非課税枠)の大幅引き上げ 
  • 法人所得税の税率の一部引き下げ
  • 源泉税徴収対象サービス範囲の縮小

今回の減税、とくに税収の80%を占めていた間接税(主にVAT)の大幅な歳入減を補うための方針は不透明なまま、スリランカ政府は2020年内に合計約48億米ドルの対内外借入金の返済期限を迎えることになります。

2020年3月に始まったCOVID-19による経済の大打撃により、スリランカ政府はいち早く中国から5億米ドルの融資(返済期間10年)を受けました。この中国頼みの応急措置は、さらに道路改修プロジェクトへの8千万米ドルの融資受入決定、さらに5月の5億米ドルの追加融資受入決定と続くことになり、現在中国の権益下になってしまったハンバントタ港開発プロジェクトにて融資返済不能に陥った経験を想起させるものです。

政府は、世界銀行・国際通貨基金 (IMF)・アジア開発銀行 (ADB)に対して、融資返済の猶予期間設定を求める一方、日本を含む外国投資にも大きな期待を寄せています。昨年11月に新大統領の初外遊先に選んだインドとの間で新たに4.5億米ドルの融資受入の合意がなされたように、インドもスリランカにおける影響力の拡大を狙っています。なかでも1年以上前の2019年5月に合意がなされた、インド・日本・スリランカによる、コロンボ港東部コンテナターミナル開発 (ECT)プロジェクト予定地は、中国主導のコロンボ国際コンテナターミナル(CICT)プロジェクトに隣接しています。今月2020年7月になり、コロンボ港湾労働組合の主導による、当ECTプロジェクトからの外資の排除を訴える大規模抗議運動を契機に、スリランカ政府内でプロジェクト自体を見直す動きが始まりましたが、インド政府は、このストライキが、在スリランカ中国大使館による労働者達の扇動によるものだとの疑いをかけるなど、印中両大国の対立の構図は、このコロナ禍のスリランカでも目に見える形で表れてきています。

執筆者紹介:田中啓介 / Keisuke Tanaka

Global Japan AAP Consulting Private Limited

代表取締役社長/米国公認会計士

南インドのチェンナイにてGlobal Japan AAP Consulting Private Limitedを創業、スリランカのコロンボにGlobal Japan Lanka Consulting (Pvt) Ltdを設立し、インドおよびスリランカに進出する日系企業の市場調査や法人設立支援、会計税務、法務、労務、カンパニーセクレタリー等の各種コンプライアンスのアウトソーシング支援やアドバイスを中心として、これまで100社超の日系企業の南アジア進出を支援。2012年からチェンナイに移住。

【Global Japan Consultingインドおよびスリランカ法人の概要】

会社名
Global Japan AAP Consulting Private Limited(インド法人)
Global Japan Lank Consulting (Pvt) Ltd.(スリランカ法人)
代表Founder & Managing Director
代表取締役社長 田中 啓介(米国公認会計士)
事業概要南インドのチェンナイに本社を構える国際会計事務所。 バンガロールおよびハイデラバードにも拠点を持ち、インドに進出する日系企業の市場調査や法人設立支援、会計税務、法務、労務、カンパニーセクレタリー等の各種コンプライアンスのアウトソーシング支援やアドバイスを提供。
所在地インド/スリランカ(チェンナイ本社)
その他拠点バンガロール、ハイデラバード、コロンボ
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